慟哭…?

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季岾は、鬘を外していた。その容姿に、昔自分がされた事がまざまざと甦り… 知らず知らずのうちに、けんちゃんの服を掴んでいたらしい。 「どけ!」 けんちゃんが俺の手を繋いでその場を離れようとすると、横から手が出てきて俺の腕を掴んだ。 その瞬間、 身体がゾワリと身震いし、言い難い恐怖が掴まれた腕から這い上がってくるような感覚に… 俺は暴れてその場から逃げ出した。 「蘭!」 いやだ… いやだ… 俺が何したの? 何で皆そんな目で俺を見るの? いやだ いやだ やめて 触らないで… ただがむしゃらに走っていた。 逃げても逃げても 『闇』は俺を捕まえにくる。 どんなにもがいても、 一度足を踏み入れたら、この泥沼から抜け出せない。 誰か… 助けて… ………ちゃ…ん ガツンッ! 後頭部にいきなり衝撃を受けて、顔から地面に倒れた。 頬をするのは土で… 俺はいつの間にか寮から外に出ていたようだった。 霞む視界に辛うじて見えたのは… 小柄な少年のシルエットだった。
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