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目の前で蝶が羽ばたき、まるで花とダンスをしているかのように…
風で揺れる花と
舞う蝶を見ていた。
朝方、
來臥の部屋を出てから庭園のベンチに座って、膝を抱えていた。
自分達で出した結論が、間違っていたとは思わない。
それでも…
心を半分亡くしたみたいに虚無感が消える事はなかった。
ひらひらと舞う蝶は、太陽に向かって飛び立ち…
眩しさに瞳を閉じた。
ぽっかり空いた穴を埋めるように這い出てくる闇から、身体を守るように自分を抱き締める。
その闇に被さるように、來臥の最後にみた優しい微笑みが浮かんだ。
…大丈夫。
だって、來臥がちゃんと塗り替えてくれたから。
俺の身体を這うような何本もの手が消えて、
愛しむような來臥の手に変わると、震えは治まった。
…でもね?
その暖かい手を離したのは、間違いなく俺で…
俺達は、
別々の道を選んだんだ。
それが來臥の優しさだと気づいていても…
俺は、あの頃と変わらずに膝を抱えている。
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