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………ファサ…
「……風邪ひく」
不意に頭上から聞こえた声と共に、俺に何かがかけられた。
小さな溜め息をついて、俺の偽りの黒い髪を撫でる…
…大きくて安心する手。
「……決めたんだな」
「……………うん」
頭を撫でていた手が髪を掬い、額に柔らかい感触を感じた。
「…………ろう…ちゃ…昨日も…」
いいかけて止めた。
きっと、はぐらかすから…
「……ん?」
「…ううん…何でもない。………クシュッ」
「…」
クシャミをした俺を何も言わずに抱き締めてくれるろうちゃんに…
俺は瞳を閉じた。
…昨日もここに来たんでしょう?
……………気がつくと、そこは見慣れた部屋で…
でも暫く足を踏み入れてなかった自分の部屋。
「……蘭?」
霞む視界にうつるのは、
俺を支えてくれた大事な…大切な人達で…
「………ただいま?」
「…蘭!」
「チッ…この馬鹿」
「…ああ、お帰り」
彼らの泣きそうな笑顔に、俺も小さく笑った。
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