7208人が本棚に入れています
本棚に追加
…自分の幸せ
小さい頃は、母さんが幸せなら俺も幸せだと思った。
來臥と一緒にいれたら、それだけで幸せだと思った。
大切な友人達と過ごす日常が幸せだと思った。
…でもね?
俺が『ソレ』を求めると、必ず手から零れ落ちてしまうんだ。
神様には嫌われているから…
だから…
もう、何かを求めるのは止めようって思った。
俺が『ソレ』を求めなけば、皆が幸せになれるから…
自室のベランダから、闇色に染まった空を見上げた。
『まるで宝石箱のようだね』
不意に思い出した言葉に、苦笑が漏れる。
「…本当に…宝石箱のように瞬いてるよね…」
…俺は、『ソレ』を求めてもいいんだろうか。
今度こそ…
俺も…皆も…
…幸せになれるんだろうか。
「蘭、ちょっといいか」
廊下を歩いていたら、前からきた宮ちゃん先生に捕まった。
「お前だけ進路出てないんだが、決まったのか?」
社会科準備室で最初に言われたのが、未提出の進路希望書。
「進学か就職か…どっちかでも決まんねーか?」
,
最初のコメントを投稿しよう!