闇が明ける朝には…

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「ここにいたのか」 「なっちゃん」 昼休み。図書室の本棚の前で立ち読みしていた。 なっちゃんが俺が見ていた本をみて、眉を潜めるから苦笑した。 「面白い本見つけちゃった。鷺ノ宮って、凄いんだね」 「………蘭、お前」 会社案内とかじゃなく、普通に一冊の本とか。凄くない?別世界だよねっていえば苦笑された。 「本家に入るのか?」 「…ううん。普通に見つけちゃって感心ちゅー?」 「何だソレ」 ふっと笑うなっちゃんの笑顔に、暖かい気持ちになる。 なっちゃんの隣は居心地がよくて…つい、この場所を求めてしまう。 パラパラ捲っていくと、初老のおじいさんが写っていた。 厳つい顔に厳酷そうな瞳だが、どこか父さんにも似ている人。 …あれ…この人… 不意に思い出した光景は、なっちゃんの回された腕の中で消えてしまった。 「なっちゃん、読めない」 「後で読め」 「ふふ…何それ嫉妬?」 「当たり前だろ。癒しが足りないんだ」 冗談で言ったのにサラリと当たり前発言されて、言葉を返せなかった。 最近のなっちゃんは、ストレートにモノを言うから反応に困ってしまうんだ。 ,
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