闇が明ける朝には…

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寮の自室のドアを開けると、脱ぎ散らかした靴があった。 それをみた俺が急いでリビングの扉を開けると、 ソファーで寛いでいたけんちゃんが驚いたように振り返った。 「けんちゃーん!」 「ぅわ!なん、何だ!どうした!」 思わず後ろから抱き付いた俺にあたふたするけんちゃんを見るのは、もの凄くレアで… 携帯で写真をとりたくなった。 「だって、久しぶりなんだもん!ね、今日一緒に寝ようね!」 「はあああ!?」 …俺の幸せは、 こんな何気ない日常なんだ。 手元にあるのは、図書室で借りたあの本。 初老の男性がインタビューを受けている写真で… 彼の後ろに写っている風景に、 記憶の蓋が音をたてて開く。 …それは、幼き日の思い出。 忘れていた記憶。 本を閉じると、部屋を見渡した。 「…おい、俺は寝るぞ」 「あ!待って!」 「…まじに一緒に寝んのかよ」 「けんちゃんのツンデレ…はぅ!だから痛いんだからね!」 「…チッ。寝相悪くても文句言うなよ」 「今まで3回落とされたよね」 「…数えんなや、早くしろ」 自分の部屋の電気を消して扉を閉めた。
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