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「…貴方は間違った事をした訳でもない。違いますか?少なくとも、僕達は幸せでした。」
微笑みさえ浮かべる青年に、男性は瞳を閉じて込み上げるモノを逃すように吐息をはいた。
「あ、そろそろお食事の時間ですね。戻りましょうか」
そう言って車イスをおす青年の手に、手を重ねた男性の手は微かに震えていて…
「…有難う」
呟いた言葉は風に消えそうな程小さかったけれど、青年には届いたようで小さく笑った。
「何してんだ?」
不躾に開いた扉に、青年は肩越しに振り返って首を傾げる。
「…何って…見てわかんない?」
「明らかに甘い匂いがむかつく」
「ならこなきゃいいのに…紫音さんは?」
眉間にシワをよせて目で何で?って訴えるのを答えるかのように、彼の後ろから声がかかる。
「いい匂いですね。所で、貴方は何でここにいるんですか。男子厨房に入らず精神の貴方が」
「ひでぇ言い様だな、紫音」
「私が頼んだんですよ。会長が食べたいっていうので」
「はあ?あの頑固爺が?」
「貴方のお父さんでしょう」
背後で繰り広げられるコントに、口元に笑みが溢れた。
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