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◆side,RANJU◆
「もう一度言って下さい」
「蘭珠をお前の後継者にすると言ったんじゃ。ボケたか」
「少なくとも会長よりは脳細胞ありますよ」
目の前で繰り広げられる親子喧嘩は、ここに来てから日常茶飯事だった。
―――……
…高校を卒業したあと、皆には黙ったまま父さんと『鷺ノ宮』本家に入った。
父さんが俺の為に、母さんの旧姓を名乗らせてくれた事に感謝していたけど…
それじゃ駄目だと思ったんだ。
…過去から逃げたら前には進めない。
皆は、ちゃんと自分の与えられた境遇を乗り越えて自分の足で立っているんだ。
だから、俺も自分の足で立ってちゃんと向き合おうって決めた。
父さんの父親…祖父である会長は、そんな俺にただ一言…
「…迷惑をかけるな」
冷たく射抜くような眼差しで言われた。
紫音さんに『鷺ノ宮』になるのに、必要な学力、知識、マナーなどを教わりながら…
父さんの秘書見習いとして、この家で暮らすうちに…
俺が昔、耐えられなかった黒い闇の部分が俺の足を捉えた。
それから逃れて立ち上がれたのは、意外な人物…
…祖父である会長のおかげだった。
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