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………ヒヤリとした冷たい感触に、意識が浮上する。
額に感じる気持ちよい冷たさは、俺の意識を徐々に覚醒させてくれて…
闇の中から救いだしてくれる。
「………気がついたか?」
頭上で聞こえる声は、まだ夢の中にいるんだろうかと思ってしまう。
「……夢じゃない…俺はここにいる…蘭」
重たい瞼を持ち上げて、霞む視界にうつったのは…
闇色の髪と、
優しく細められた闇色の瞳で…
「………ちゃ…?」
「あぁ…大丈夫か?」
「………ん」
頬に触れる温もりは、本物で…
霞む視界が徐々にぼやけていくけど、手を伸ばせばその手をとってくれて…
「…少し背も伸びて…綺麗になったな…蘭」
「……んで…こ……に?」
何でここにいるのかわからなくて聞いた自分の声は、凄く掠れていて…
同時に感じる首の違和感に、気持ち悪ささえ覚える。
「…悪い…もっと早く来たかったんだが…
…蘭。泣くな…
もう大丈夫だから」
知らず知らずに溢れた涙は、優しい口付けで拭われた。
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