Chapter1 くくるもの

9/43
前へ
/2222ページ
次へ
「分かったよ。そのてるてる坊主を吊るした人。いや、子供かな」 三門さんが、てるてる坊主を指差しながら言った。 「もう4年も前になるから、まだ菊理ちゃんがここに来る前のことだね」 三門さんが続けて話す。 「今日七歳の七五三の儀をする女の子なんだけどね。三歳の時も来ていたんだよ。でもその日は酷い大雨で、女の子は着物が濡れて泥も付いて、泣いてしまったんだ」 「だから今日は絶対に晴れて欲しかった」 私が空を見ながら言った。 「そうだね。きっと家にも吊るしてるけど、ここにも付けたかったんだろうね」 「今回は良い思い出になるといいですね。じゃあ、私、玉串を切ってきます」
/2222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33313人が本棚に入れています
本棚に追加