Chapter12 かこむもの

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蝶からも不思議な力を感じるし、羽はナイフみたいに鋭くて固い。 これじゃあ林の中に入れない。 でもきっとお姉ちゃんはこの中にいる。 私は黒い蝶をじっと見つめる。 邪魔しているのはこの蝶一匹だけ。 上手く避けられれば……。 落ち着いて、ゆっくりと息を吸う。 冷たい空気が身体中を巡る。 落ち着いて、だけど足に力を込めて……。 いち、にの……、 「さんっ!」 私は正面から蝶に向かって走ると、前のめりに倒れ込むように跳び込んだ。 ビュンと頭の上で空気が切られる音がする。 なんとか避けられた? 雪の上に手をついて、すぐに起き上がると私は木の間へ走り込んでいった。
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