Chapter12 かこむもの

33/61
前へ
/2222ページ
次へ
黒い蝶は死んでしまった。 背中の傷はまだ痛いけど、助かったのかな。 そう思いながら、なんとか立ち上がる。 でも、目の前にもっと恐いのがいる。 黒い蝶をあっという間に握り潰してしまった白い腕。 雪の上に出ているのは腕だけ。 身体は見えない。 とても白く、生きている感じのない腕。 でも死んでしまっていたら動けないはず。 ウルちゃんは動かなかったから。 雪の中に誰かいるのかな? 「えと、ありがとうございます」 私は腕だけの人にお礼を言うと、あまり近づかないように避けて歩いた。 林の奥に向かって歩くと、大きな洞穴(ほらあな)が見えてくる。 不思議な力、プレッシャーはその中から強く感じた。
/2222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

33312人が本棚に入れています
本棚に追加