3352人が本棚に入れています
本棚に追加
‡とある絶滅危惧種の場合‡
ある日の昼下がり。
人が立ち入れば、ものの数分で気を失う程、邪気で空気が澱んだ谷底にある深い森の中に、一人の少女が悠然と歩いていました。
「うはー……すんごい邪気。
でもここにローたんご所望の毒草があるからなぁー。」
そう呟く少女・チアヤ。
なんと自分の為では無く、教師仲間の為にこんな場所まで来て…
「まあ、そのかわり授業変わってもらえたし、私は思う存分素材ツアー出来るから良いんだけどねー。」
否。自分の為でした。
時折、誰と喋っているのか?と疑問になるぐらいの大きな独り言を呟きながら、チアヤは様々な毒草やキノコを採取していきます。
息をするだけで空気が浄化される人間浄化装置なチアヤにとって、常人が数分で気絶する邪気なんてへでもないようです。
暫く採取をしていると、彼女の頭に1匹の蝶が止まりました。
蒼色の鮮やかな羽を持つとても美しい蝶です。
この蝶はピュールパピヨン。
蝶が放つ蒼色に光る鱗粉は微弱な浄化の力を宿していて、蝶が通った場所は神聖な土地になると言われています。
群で生活する蝶達は、多いものになると数万以上の群になる場合もあるという珍しい蝶です。
しかし、その鮮やかな羽が狙われ乱獲され、今では数万以上の群どころか群自体もあまり見かけられなくなっている絶滅危惧種でもあるのですが…
最初のコメントを投稿しよう!