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「まだ消えてないのね」
それから何時間もたった、5時間目の授業中。机に突っ伏していたハルヒが、不意に小声でそう言ってきた。
「…なにが」
教師が黒板に文字を書き始めたのを見計らって、そっと体を後ろに近づけてそう問う。
「香りよ」
「香り…?」
あ…。
そう言われて思い出し、無意識に、左腕に鼻を近づけ、ブレザーの香りを嗅ぐ。…確かに、まだ香りがする。
ブレザーを脱いで、さらに確認をする俺を見て、ハルヒは、さして興味もないように窓の外に目を向けた。
「いつになったら消えるのかしらね、それ」
それは、言えてるな。
移り香だから、そこまで長くは持たないだろうと思っていたのだが…
「さぁな」
それほどまでに至近距離にいたからなのか、ただ単に香りが残りやすいだけなのか。
どっちにしても、俺はこの香りのせいで、しばらく古泉のことを考えてしまう羽目になったのだった。
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