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お昼休みが終わり、授業開始5分前。5時間目の準備をするために、席を立った僕に、
「古泉君、なんだか元気ないね」
隣の席の女子生徒が、不意に、僕にそう話しかけてきた。
元気がない…?
「そう…ですか?」
いつも通りだと、思っていたのですが。
普段話しかけてくることのない彼女が言うのだから、相当わかりやすいのだろう。
「うん、なんか…すっごい辛そうな顔してるよ」
辛そう?僕は今、笑っていないのか?
「心配をおかけして申し訳ありません。ですが、きっとすぐに戻ると思いますので」
にこっと微笑んだつもりだったのだが、彼女は、さらに心配そうな顔をして、結局他の友人の元へかけて行ってしまった。
その後ろ姿を見送りながら、僕は顎に手をやり、ため息をつく。
おかしいな…こんなことは、今まで生きていた中で、一度もなかったはずだ。
今まで、何があったとしても、笑えていたはずなのに。
5時間目は、彼女が言った台詞と、
『嫌だ』
不意に浮かんだ、去り際の彼の苦しそうな横顔が、なぜか脳裏から消えなかった。
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