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…最悪だ。左頬の筋肉が、ひきつるのがわかる。
「これから、部室に向かうんですか?」
教室を出て、そこでばったり古泉と出くわしてしまい、なんだか気まずい空気が、その場を漂っている。
いや、古泉自体はニコニコ笑ってるので、そこまで気まずそうなわけではないのだが。
「よければ、ご一緒しませんか?」
「いや、だ」
あ。しまった。
「…どうしてですか?」
あくまで微笑んだまま、古泉はそう問いつめてくる。
言えない…
『お前と長時間顔合わせてるのが気まずい』
だなんて。
俺は、逸らしそうになる瞳を無理矢理古泉と合わせて、気力を振り絞ってにこっと微笑み、
「なんでもない、口が滑った」
墓穴掘った――!!
見事に口を滑らせた俺である。
「へぇ…口が滑った?」
「え、いや、今のは…」
面白いほど古泉の笑みが深くなる。
やばい。
その頬がひきつり、目の奥が冷たい色を放っているのは、気のせいではない。絶対に。
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