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は?と首を傾げて、肩口を見ると、古泉の横顔が見え、夕日に照らし出されるその白い肌に、不覚にもドキッとした。
「ある日、って?」
慌ててその横顔から目を逸らし、高鳴る胸を、何とか押さえ込もうと努力する。
「…あなたが、長い長い悪夢から、目覚めたあの日から」
…その言葉に、一瞬いつのことかわからなかったが、はっと思い出す。
「僕らの記憶では、階段から落ちて、昏睡状態だったあなたが、目覚めた日のこと…あなたの記憶では、改変された世界から、帰ってきた日のことです」
…夕日に照らされた病室。
横を向くと、学ラン姿ではなく、きちんと北校の制服を着て、胃もたれしそうなくらい、大量にリンゴを向いていた、いつもの微笑面の古泉。
…今でも鮮明に、覚えている。皿の上の、ウサギリンゴの形も含めて。
「…あの日、起きたばかりのあなたの瞳が、忘れられないんです」
「起きたばかりの、」
俺の、瞳…?
「…一瞬でしたが…」
古泉は、俺のブレザーを軽く握りしめ、
「あなたは僕の姿を通して、違う姿を見ていた」
「!」
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