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「離せ…!」
「なぜ?」
「なぜ、って」
質問の意味が分からず、顔を上げるが、俺はまたすぐに俯き、唇をかんだ。
「どうかしましたか?」
間近で聞こえる声に、唇をかむ力が強くなる。
悔しい。
…俺が古泉に覆い被さるのと、古泉が俺に覆い被さるのは、格が全くちがかった。
目の前にあるのは、何を考えているのかわからない微笑に、暗い視界。
耳に直接そそぎ込まれているかのような低い声に…8㎝の背丈の違い。
迫力が、あまりにも違いすぎた。くそっ。
「あなたが先にやったんですから」
殴ろうとした俺とは全く異なる方法で、俺を追いつめる古泉。
嘘だろ…こいつ、怖い…!
石のように固まってしまった足を叱咤し、何とか逃げようとした俺の腕をがっちりと掴み、古泉は、まるで恋人同士が見つめ合うように、俺の顎を指で捕らえ、そのままくいっと上を向かせてきた。
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