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「なに…怒って」
はたから見ると、いい雰囲気の恋人のワンシーン(いや、男同士なのだが、この際どうでもいい)だが、実際俺は、今にもライオンに食われそうなシマウマの気分だ。
今すぐ逃げたい。
「怒ってる?僕が?」
くっとのどを鳴らして笑いを漏らす古泉。
その笑い声さえ、俺の体の動きを制限してしまう。
「どうしてそう思うんですか?」
「普段のお前なら、こんな暴挙に打って出たりしないだろう…?」
そう、普段なら、だ。
「俺を簡単に黙らせる方法なんて、いくらでもあっただろうに…」
口の巧い古泉からすれば尚更だ。なのに…
「お前は、俺に仕返しじみたことをしてる」
「…なるほど。あなたの中の僕は、だいぶ大人のようですね」
ふと、顎から手を外され、頬を撫でるように包み込まれた。
頬をすっぽり包み込んでしまった古泉の手の大きさに、俺は唖然とする。あれ、俺こいつとタメのはず…
加えて、その手の冷たさに身震いをした。
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