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がつん、と頬を殴られた、グーで。 痛みはない。夢だから。でも、痛そうな音はした。 地面に倒れ込む俺に馬乗りになると、古泉は俺の首を両手で締め上げた。 『なぜあなたは正しいんだ!どうしてそう言い切れる?どうして僕が、古泉 一樹ではいけないんだっっ!!』 そう、俺の世界では、俺が正しい。 でも、さ。 『そうじゃない』 違う、違うんだよ古泉。 『お前は、古泉 一樹だ』 『…え…?』 そう、こいつは古泉 一樹。 あいつも、古泉 一樹。 『でも、俺の中の古泉は、お前じゃなかった。それだけだ』 心の中の、『正しい答え』は、人それぞれだ。 現に、こいつは自分が『古泉 一樹』というのが『正しい答え』であり、俺が言う『古泉 一樹』は、『間違い』なのだ。
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