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口であった場所はもはや…ただの穴。
その音は、ただの穴から漏れている。
舌は何処かへ消え、歯は所々残るのみ。
唇などと言うものは無く、目には細い木片が何本も、何本も…たくさん捩じ込んであった。
縦に割けた腹から中身が引きずり出される。
…ベショッ
引きずり出しては捨て、引きずり出しては投げ…何かを探しているのかいないのか。
血が喉に流れ込む。
あぁ痛い…苦しい…。
不意に柔らかいものが穴に触れた。
なんて綺麗なんだろう。
月明かりに照らされたそれは、血に染まった黒髪の少女。
それは美しく、まるで汚れなき妖精(フェアリー)のよう。
幸福そうに、愛惜しいそうに微笑んでいた。
誰も彼女に振れてはいけない。
目の前にあるこの少女には…。
少女はまた、唇を穴に重ねる。
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