雪花舞い散る丘の上

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ひらひらと開け放たれた窓から、舞い降りる白いもの---。 「……雪?」 ここは少女の自室。 朝は冷え込むというのに、重厚な石造りの部屋の窓を開け放ち、高い塔から外を眺めていた。 少女は上質な寝衣から真っ白な腕を伸ばし、舞い降りた白いものに手の平を差しのべる。 ふわり--- 舞い降りたのは、一枚の花びら。 華奢で真っ白な腕とは不似合いな事に、少女の指先はやや荒れていて爪も短く切り揃えられている。 それでも少女は、荒れた指先を気に留めることなく愛おしげに花びらを両手で包み込む。 「待っていてね。必ず行くから……」 あの花畑を一望できる丘へ……。
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