一章

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「今年の桜もきれいだ」 一人の少年が、一本の大きな桜の木の下で寝転がりながらしみじみとつぶやく。この、桜は山の奥の少し開けた場所に立っていて、この場所を知っているのは、翔乃進と、その幼なじみしかいない。 その時近くの茂みから 「翔乃進!」 と少年、大御杉翔乃進(おおみすぎ しょうのしん)を呼ぶ声が聞こえた。翔乃進がそちらを見ると、一人の少女がこちらに駆け寄ってくる。「ん?ああ、紅(あか)ちゃん。どうしたんだよ、そんなにあわてて。」翔乃進が体を起こすと幼なじみのその少女、西雅野紅(にしみやびの くれない)は、翔乃進の肩を掴んで、前後に揺さぶりながら、 「紅ちゃんってゆーなっ!あと、お前これに行くつもりだろ!」 と、言って持っている紙を翔乃進の目の前につきだした。それは今日の瓦版で、近々隣国と戦を始めるという内容が書いてあった。その瓦版を見た翔乃進は、なんでもないと言う感じで、「あぁ、行くよ。こうみえても武家の者だからね。」そう言って笑う翔乃進に 「この間も行ったばかりなのに…」 と、紅が言うと 「ははっ。この間のやつで頭に気に入られたみたいでね。そんなことより、ここまで走って来ただろ?髪が少し乱れてる、こいよ」
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