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―美容院―
白江
「電話をかけると移動出来るのか?…ん?何だこの紙…何か書いてあるが…」
天野
「こうなるだろうとは思っていたが、実際に来てみると信じられないものがある。ここは最初に取材に行った美容院にそっくりだが同じ場所ではないようだ。
出口がない。
いや、正確にはドアはある。しかしその先が無い。出口の先には地面も空も何も無い空間がぽっかりと口を開いている。試しに置いてあったファッション誌を投げ込んでみたが音も立てずに視界から消えてしまった。
安全である保証が無い以上はここに飛び込むのはリスクが高いだろう。
意識を失った人たちが数時間の間は生きていたというのはまさに今の俺のような状況だったのではないか。
たとえるなら生と死の境目、仮に『境界』と呼ぶ事にする」
白江
「! これは天野の字!」
カラン…
白江
「? 懐中電灯?それに携帯電話か…さっきのとは違うようだが…」
二つを拾うと、視界の隅に先程と同じような紙が落ちていた
天野
「しばらく店内を探索したがたいしたものはなかった。使えそうなのは女性のものと思われる携帯電話くらいだ。
この電話……繋がるんだろうか。
物の試しに、取材で使った電話帳から適当にかけてみることにする」
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