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マスター
「お帰りなさい 御主人様」
「人形が…動いた?」
私は、夢を見ているのかと思い一度頬を抓ってみようとした。
パシッ
「駄目です、頬なんか抓ったら痛いですよ」
手の感触…人形に掴まれた感触でこれは夢ではないと理解した。
金色の髪の奥に覗く空色の瞳…いつもは瞳を閉じているのでどんな色かはわからなかった。
しかし今、人形の瞳が開きどんな色かがわかる。
暫くの間見つめていると、少年が薄っすらと微笑んだ。
その微笑みにドキッと胸が鳴りアリエッタは目を逸らした。
「どうして目を逸らすんですか?御主人様?」
「あの、えっと…」
「あ、そうですよね」
オドオドして言葉を探していると、少年が手を放して一歩下がると私に向かって片膝をつきお辞儀をした。
「!?」
「申し遅れました、僕の名はフォルテ=エレジートと申します」
「フォ、フォルテ…さん?」
「フォルテでいいですよ御主人様」
フォルテはそっと立ち上がるとアリエッタの頬にキスを落とした。
「!?」
急なことに驚き私はキスをされた頬を抑えて後ずさった。
フォルテはお構いなしに近寄ってくる。なんだか怖くなって部屋から出ようとしたら後ろから抱きしめられた。
「逃げないで…御主人様」
「や、離して!」
「どうして?やっと会えたのに…僕はこの日をずっと待ち望んでいた」
「…ずっと?」
人形の様子が変わりもがくのをやめるとスッと体が離れた。
フォルテの方を向き表情を見ると、悲しげな眼差しを向けていた。
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