序章 造られた英雄

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この世界には魔王が存在した。 魔王は人間では対抗できないような圧倒的な力を有し、その気の赴くままに人間達を襲っては人々に恐怖を植え付けていた。 だが人間達もただやられてるだけではなかった。 人間の力で対抗出来ないのであれば、人外の力で対抗しよう…と。 日夜研究と実験を繰り返してきた人間は、ある時、ある特殊な液体に目を付けた。ある魔獣の体内で生成される液体である。 その液体はこの世界ではまだ確認されていない電気を、大量に宿していた。 人間の大人が触れても即刻感電し、死に至る程の莫大な電力…。 だがこの国の研究員達は国王の命令の元、そんな危険な液体を薄め、何と産まれて間もない赤ん坊をその液体の中に漬けたのだ。 薄めてるとは言え電気が流れる液体、漬けられた赤ん坊はまだ言葉が発せれないながらも、苦痛に悶え、泣き叫んだ。 それから毎日、その赤ん坊は栄養補給の為だけの食事と睡眠以外の時間は全てその液体へと漬けられた。 赤ん坊の叫び声が段々収まり激痛に慣れてきたと感じたら、少し液体を濃くする。それに慣れてきたらまた少し濃くする、それの繰り返し。 飽きることなく続けられた拷問のようなその実験は15年間。 赤ん坊だったその子は立派に成長し、今では原液に使っても痛みを感じる事はなくなっていた。 遂に青年はその身に莫大な量の電気を宿したのだ。 それから3年、青年は血反吐を吐くような鍛錬の元、その力を使いこなせるようになっていった。 更には剣術や体術、その他にもあらゆる武術をマスターし、その技術やセンスもさることながら、その類を見ない運動神経は、最早人間の域を逸脱した存在へと成長…進化していた。 こうして人外の力を持った勇者は、人の手によって造られたのだ。 その後、青年は国王の命により、1人魔王討伐を命じられる事になる。
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