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激化を極めた戦争と共に何も無くなった今の時代には、場末のジャズバーといえど無くてはならない存在だ。
穴が空いたジーパンが鳴らすチェロ、埃まみれのジャケットが弾くピアノ、革パンツが吹くサックス。
ヒドい格好が織りなすジャズはまた、音もヒドいが悪くない味を出している。
かえって下手なクラシックよりも聞き流すにはうってつけかもしれない。
カウンターの奥で白髪頭のマスターが、広口のロックグラスを真新しい白い布で磨いている。
まるで卵を扱うように丁寧で落ち着いた手つきだ。
そんな静かな彼らを後目に、人だかりが出来た壁際には、まるで空気が沸騰したような熱気が漂っていた。
彼らが囲っているのは、一組の男女と、その二人が向かい合うテーブル。
男は、趣味の悪いアロハに蛇革のパンツを履いた、黒い毛が生えた豚。そんな一言で片付く容姿だ。
女の方は、そんな男……、失礼。そんな豚には似つかわしくない容姿だった。
目を引くプラチナブロンドのセミロングの髪の毛。
無表情な顔にはわずかに幼さを残した、大人と子供が共存した顔つき。
服装は水色のキャミソール、白いプリーツのミニスカートにガンベルトを巻いている。
茶色のウェスタンブーツをテーブルの上に投げ出し、椅子を傾けて後ろの壁に寄りかかっていた。
自らの手の中にある五枚のトランプカードに、氷のように冷め切った灰色の瞳を落としている。
「レイズだ!」
男はテーブルの上にヨレヨレの百ドル札を叩きつけるように出した。
その下には既に七枚の百ドル札があった。
合計八百ドル。ポーカーで勝負を掛けるには悪くない金額である。
「コール」
女は無表情でそう告げると、男と同数の百ドル札を出した。
その瞬間、男がニヤリと笑う。
そして自らの手札をテーブルの上に投げ出した。
途端に野次馬が騒ぎ出す。
男の持っていたカードは、すべてスペードで揃っている。
つまり、男の役はフラッシュだった。
スリー・オブ・ア・カインド、ストレートに次いで強い役である。
男は既に自慢げで勝ったような気持ちでいる。
仲間らしき野次馬とハイタッチまでしている始末だ。
「どうだ、お嬢ちゃん。今なら、裸になってくれれば許してやるぞ」
男は女の全身をなめ回すように視線を走らせた。
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