2人が本棚に入れています
本棚に追加
僕の両親は、僕が物心ついた頃から仲が悪かった
口論は日課のように繰り返し、時には暴力にまで及んだ。僕が中学生になる頃は、逆に会話は無くなり互いを無視するようになった。
「まだ7月になったばかりなのに…蒸し暑いや」
そして三ヶ月前
僕が高校生になったあの日。待ってましたとばかりに両親は離婚した。
子供には多すぎるお金と、広すぎるマンションの一室を残して
「蕎麦にしようかな」
陽が落ちても身体に張り付く暑さに、少しウンザリしながら夕飯のメニューを思う
なるべくは自炊を心掛けてはいるけど、気分が乗らない時は気晴らしも兼ねてコンビニへ足を運ぶ
徒歩10分
最寄りのコンビニの看板が暗がりをボンヤリと照らし、入口の自動ドアを抜ければ聞き慣れた声が迎えてくれた
「いらっしゃいませ!―って宗助かよ」
顔見知りとはいっても一応は客なんだけどな
「お疲れ様。お得意様なんだからもっと喜んで欲しいね」
この短髪の金髪で長身の目付きの悪いアルバイターは同じ学校に通う橘慎一(タチバナシンイチ)
因みに同じクラスだ
「じゃあ、お得意様。俺の分のコーヒーもお買い上げくださいな」
因みにこんな性格だ
「はいはい…。これでめでたく《貸し》が29個だよ」
でもそんな慎一が、僕は嫌いじゃなかった
「30個になったら何かくれよな♪」
こんな性格でも……だ
最初のコメントを投稿しよう!