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少し大きな住宅街にあるひときわ目立つ赤い屋根の家。そこには有名刑事ケビン・ホワーズの一家が住んでいる。
たいてい一家の朝はチーズとハムを挟んだホットサンドが食卓に並ぶ。あと、あったかいブラックコーヒー。ホワーズ家の一人娘であるマリルをのぞいて。
「ママー!何度も言ってるじゃん。あたしも、オレンジジュースじゃなくてブラックコーヒー飲むって!」
必ずマリルの座るテーブルの上には、猫のマグカップに注がれたオレンジジュースが置かれている。
「だって、あなた飲めないじゃない。変な見栄張らないの。」
「飲めるもん!」
そう言ってマリルは、母マリーのコップに注がれているブラックコーヒーをいっきに飲み干した。大人にはわかるあのコーヒーのおいしい苦さが、マリルの口いっぱいに広がった。しかし、十五歳のマリルには酷な味だった。目の奥から込み上げてくる涙をぐっとこらえながら、マリルはホットサンドをほお張った。
その光景を見てマリーは、呆れ顔をした。
ドッタァーン
階段のほうからすごい物音がした。しかし、この音もホワーズ家の朝には決して珍しくない音だった。
「アハハ。階段踏み外しちゃった。あー痛い。」
有名刑事のケビンは、家ではどこか抜けている。
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