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こんな調子の父をほとんど毎日目にしているマリルからすれば、事件現場で数十人の部下を指揮下に日々事件を解決している姿など予想もできなかった。
しかし、新聞の紙面はみんな父をヒーローの様に扱っている。
家での父が本物か、現場での父が本物か、マリルでさえわからない。
ケビンは、ひとあくびして席に座るとテーブルの上の新聞を手に取った。
「今日の新聞は爪痕をつけたデザインなんだね。芸術的で実にクールだ。」
そう言ってケビンは、爪痕まみれの新聞を広げて読みはじめた。
その様子にマリルはため息をつきそばにいるグレーの猫をだいて言った。
「トルマティーノよ、パパ。この子が爪を磨いだの。いつもの事じゃない。」
ホワーズ家の誰よりも愛されているグレーの毛の長い猫トルマティーノは、よく新聞で爪を磨ぐ。そして必ずケビンは同じセリフを言う。「芸術的でクールな新聞だ。」と。
「トルマティーノは、パパに気を使ってるのよ。」
そう言って、マヌケなケビンに一言マリルはつけくわえた。
トルマティーノがつけた爪痕の部分は「怪盗G・S」の記事だった。最近は、どのメディアも彼の事で話題はもちきりだった。必ず盗みを働く時は予告状を警察に送りつけ、シルクハッとと杖を身にまとい、闇の中を駆け巡る。まるで、小説の登場人物のような謎の人物。・・・凄腕刑事ケビンがお手上
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