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副会長達の攻防戦を見ながら俺は、そういえば自分も名乗っていなかったことに気付いた。東龍院に向き直り口を開こうとしたのだが、後ろに腕を引かれた衝撃でそれは出来なかった。 『星名…くん?』 「洸一!早く帰ろうぜ!!」 腕を引かれた方を見てみると、そこには俺の腕をしっかりと握った叶の姿があった。 しかも何故か焦っている様子で、早く帰ろうとぐいぐい腕を引っ張ってくる。 何をそんなに急いでいるんだろうと不思議に思いながら、叶に身を任せる感じで風紀室の出入口に向かっている。 『ちょ、ちょっと星名くん?』 「………」 様子がおかしくて、腕を引く背中に問い掛けてみるもそのまま出入口に向かうだけだった。 これ以上何を言っても無駄だと思い、風紀室を出る前に俺は引っ張られる体を何とか止めて東龍院に向き直った。 『東龍院さんごめんなさい。話しはまた今度でもいいですか~?』 眉を下げて申し訳無さそうに見つめると東龍院は少々困った様な何とも言えぬ顔で応えてくれた。 「そうだな。こんな状況ではゆっくり話を聞けそうでも無いし、また今度話を聞かせてくれ」 言いながら東龍院はまだ攻防戦を続ける副会長達に目を向ける。 …確かにこれじゃあ落ち着いて話しもできない。 会話が一区切りついたところで、引っ張られている腕に更に力を加えられる。叶はまた無言で廊下を進んでいき俺達は風紀室を後にした。 廊下を進んでいる途中、そういえば風紀室に副会長と百々城置いて来ちゃったな、と気付いた。最初は心配していたが、あの2人なら大丈夫だろうと気にしないことにした。
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