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気付くと大声を上げた僕に、彩月はきょとんとしていた。
『……ごめん。ただ、本当に心配だったから。つい。大人げなかった。』
「……いい。けど、ありがと。」
頬を紅く染めて微笑む彩月につい、にやけてしまう。
「気持ち悪い顔するなよな。……これ。」
彩月は照れ隠しとばかりに言えば、僕の胸に何やら袋を押し付けてきた。
首を傾げながら、中身を出せば……。
『……これ、は?彩月が?』
中には白の毛糸で編んだ帽子が入っていた。
「そうだよ。……本当に感謝してる。私、龍に会ってからの毎日楽しいし。大変だったよ、な?」
言いながら、下を向く彩月。
そんな彩月に僕はありのままの気持ちを告げた。
『最初はどうしていいか解らなかったよ。確かに磨けば光何かがある!って信じて、ちょっと無理矢理ここに連れてきて、レッスン中も、まだ全国制覇は出来ないだの言われて、途方に暮れたさ。』
そこまで、言って一度深呼吸する。
彩月はじっと俯いたまま、話を聞いている。
『……でも、君とのレッスンは楽しかった。全国制覇に向ける集中力は凄かった。フリーに転身した時も僕は驚いたよ。あんなに素直に話を聞いてくれて。そして今もこうして来てくれる。僕はそんな彩月が好きなんだよ?ありがとう。プレゼント。僕からは何にも無いけど、また今度用意するよ。』
にこりと笑い最後に彩月を見つめると、不意に目が合った。
彩月はまた俯くも今度は顔を上げ、しっかり見つめ、
「……ありがと。私も、嫌いじゃない、龍のこと。今まで、ありがと。これからも宜しくな。」
彩月が笑った。
僕が一番好きな彩月の顔。
それから暫く黙ったままだったが、彩月が不意に立ち上がり、帰り支度をする。
「帰る。プレゼント渡したし。」
帰ろうとする彩月の後ろを歩き、
『……送るよ。』
「いい。」
『……僕が送りたいだけだし、こんな夜だと、彩月が変な人に襲われたら嫌だし。彩月は可愛いから心配。』
「……。バカ。勝手にしろ。」
そんな会話をしながら、クリスマスの夜は更けていった。
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