大掃除

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「終わりましたか?」 楓さんがオフィスに顔を覗かせる。 『うん。後はここのゴミを捨てたら終わりだね。』 「では、私達が捨てに行きますよ?」 彪乃達がゴミを捨てに行く。 暫くして、ゴミ捨てから帰ってきた皆がオフィスに集まった。 『ありがとう。皆が手伝ってくれたお陰で、大掃除も終わりました。今日は解散。来年も宜しく頼むよ!』 僕が頭を下げて顔を上げると皆が頭を下げる。 「では、お先に。」 「私も帰ります。また。」 柊ーshuーと彪乃が先に出ていく。 「では、私も。また来年。」 輝琉も頭を下げて出ていく。 「じゃあ、私も。龍さん、また。」 「じゃあ、また。」 楓と楓さんも出ていけば、急に静かになった。 「お前は?」 彩月が声をかける。 『僕も今日は帰るよ?彩月、家まで送るよ。』 彩月の横を通りすぎると腕を掴まれた。 「ちょっと、待てよ?」 いつもと違う彩月に首を傾げるも足を止める。 『何かな?』 「……ってんだ?」 彩月の声が小さくて耳を済ませると。 「お前は私をどう思ってんだ?」 じっと見つめる彩月に、僕は暫し呆けていた。 「龍。」 『……あ、あぁ。どうって…。』 その時、彪乃の【想いは伝えたらどうですか?】言葉が甦り勇気を出して口を開く。 『……、素直に好きだよ。勿論色々省いてだけど。僕はプロデューサーで、君は我がオフィスのイチオシだ。それを解った上で好きだよ、彩月。』 誰かを贔屓にしてはいけない。 決意を込めた告白に彩月の反応を見ようとすれば、彩月が僕の目を見て、 「……だ、誰がそんな正直に言えと言った?は、恥ずかしいんだよお前は。」 真っ赤になる彩月に自然と笑みが溢れる。 「何、ニヤニヤしてる?」 『真っ赤になる彩月は可愛いなぁ。と。で、彩月は?』 「~~っ。本当に純粋に、私はあんたが……す、す、す、す、す、好きだ。」 最後は耳まで紅くして俯く彩月。 『ありがとう。明日時間あるなら、夜事務所においで。神社に行くよ?』 因みに明日は大晦日だ。 彩月と年を越したいし、少し軽めに誘う。 「……。たまたま休みだから、付き合ってやる。」 口ごもりながらもなんとか答える彩月。 『じゃあ、明日20時に。今日は送るよ。』 そのまま手を取り事務所を出た。 明日は彩月と年越しだ。 そう思うだけで、足取りが軽かった。
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