第三話

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 息があがる。白く短く吐く  息。寒さで身体が震える。  脈打つ雨。あの日と同じ、  迷い込んだあの日と同じよ  うな冷たい雨だった。  結局もやもやしたまま、チ  ェシャ猫を追った。チェシ  ャ猫は見当たらない。けど  この世界とは違う匂いがす  る。2つの匂い。チェシャ  猫と誰かの匂い。覚えのあ  る匂い。それを必死に辿っ  た。  辿った先には人影。一目見  れば誰だか分かった。  「帽子屋…」  彼はこっちを向いて手を上  げた  
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