はじまり

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  京ちゃんとは愁兄が中学2年になったときに同じクラスになってすごく仲良くなったみたい。 それ以来、俺を含めた3人でいろんなとこへ遊びに行っていた。   人間は自分にないものに惹かれるっていうけどあながち外れではないと思う。 事実、俺がそうなのだから。 運動ができて、 頭が良くて、優しい。 俺の憧れの人。   愁兄と、京ちゃんと、俺の3人で、ずっとこんな関係が続いていくと思っていた。 けれど、 愁兄と京ちゃんは風見高校へ進学、自宅から通うことになるからいつでも遊べると思ってたのに。 すぐに愁兄は大好きなサッカー部へ入部して連日連夜、愁兄はサッカー三昧。 顧問の先生の計らいもあって、愁兄は学校の寮に入ることになった。 通常、寮に入るにはそれなりの費用が嵩む、けどここのサッカー部は優秀だから、その中でも技術において抜き出ている者に対しては特別待遇として本人に支払いを要求するわけではなく、その費用は部活のOBや親御さんから頂いた寄付金で賄っているらしい。 つまりその特別待遇ってやつに愁兄も仲間入り。 けれど、愁兄みたいな人はごく一部。ほとんどの寮生活を送ってる生徒たちは支払っているみたいだ。     そうなると、察しがつくだろうが、ただでさえなかなか会えなくなってたのに愁兄が寮生活を始めてしまったから、本当に会えなくなった。 こうなったら自分から会いに行くしかない。って思ったから、必死になって勉強した。 先生からも絶対に受からないって言われていたこの高校に行くために。   死ぬ気でやれば大概のことできるもんなんだと、今にしてみれば思えることが出来る。 中学校を卒業する頃には目標だったこの高校が合格圏内に入っていたのだから。     で、今に至るというわけなんだけど。
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