2448人が本棚に入れています
本棚に追加
「死んで詫びろ。」
俺が謝る前に飛んできた狭霧先輩の第一声。
結局、隣にいる馬鹿の所為で僅かに遅刻。
「なんで俺だけなんですか?この人だって遅刻したじゃないですか。」
「乃亜を呼んだ覚えはない。」
そうだった。
こいつ、勝手についてきてるだけで呼ばれているわけではなかったんだと再認識。
いつもいるから、つい。
「おまえのために用意してやったんだ。有り難く思え。」
ドサドサといつもの倍近くある書類が俺の前に積み上げられる。
「これ、今日中ですか。」
「今更なにを言っている。文句の言える立場だとでも思ってるのか。これで許してやろうと思っているのに。」
それはもう果てしなく文句はありますけども。
でも、死んで詫びるよりかは、はるかにマシですけどね。
文句を言えば3倍になって返ってくることがわかっているし、なにより殺されたくないし、しぶしぶ積み上がった書類に目を通しはじめる事にした。
しかしこの馬鹿は、手伝ってくれるわけでもなく、ただ俺の隣に座ってる眺めているか、資料を取りに走り回っている俺の後ろをついてくだけ。
普通は手伝うだろ、会長として。
「役立たず。」
「相変わらず口が悪いわね。折角の可愛い顔が台無しよ。」
ふわりと柔かな感触が頬に落とされる。
今のは、なに。
先程の感触があった頬に手を当ててみたが、よくわからなくて、俺は目を見開いたまま、目の前にいるやつの顔をただじっと見つめていた。
「あら、足りなかったのかしら。じゃあ、」
喉を鳴らし、口元に手を当てて笑っている馬鹿。
空いている手はちゃっかり俺の顎を持ち上げている。
「仕事、早く終わらせたいんだけど。」
「りっちゃん、この状況わかって言ってるのかしら。」
「わかってるよ。」
「してもいいの?」
ずっとずっと近くなったやつとの距離。吐息が俺の耳元を擽りながら甘く囁く。
「男となんてしたくない。けど、手伝ってくれるなら話は別。これ、一人じゃ片付けられないから。」
俺の口からでるとは思いもしない言葉だったんだろうな、耳元から離れて俺をじっと見つめてるし、目が見開いてる。
それをただ見つめていると、やつは一切の表情も変えず俺の唇を塞いだ。
最初のコメントを投稿しよう!