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さっきから無言でいつもの倍近くある書類を片付けていく馬鹿…。
明らかに俺が片付けている量より多い、そんな実力あるなら最初からやれよとツッコミを入れたくなるのも当然で…俺、いなくてもいいじゃん。
「りっちゃん、喉乾いた。」
一息付いたのか背もたれに深く身体を預け、甘えた声をあげる。
気持ちが悪いことこの上ない。
「りっちゃんの入れてくれたコーヒー美味しいわよ。」
「普通にコーヒーメーカーに入ってたやつ入れただけだけど」
「きっと愛がこもってるのね。」
人の話、聞いてんの?
「それにしても、さっきのりっちゃん可愛かった。狭霧もそう思ったでしょ?」
「俺に聞くな」
ごもっともな意見で。
あんな場面見て感想答えるやつがいたら、そいつは確実に頭がおかしい。
「りっちゃん、次までにもう少しキスのお勉強しておこうね」
「何言ってんの?あんたとは二度としないよ」
「わかってる。りっちゃんの言いたいことは全部わかってる。」
絶対にわかってない。
その意地悪そうで、含みのある笑顔で言われても、当てになるわけないじゃん。
不貞腐れながらやつの顔を睨み付けると先程まで俺のと重なっていたやつの唇が目に入った。
『俺を求めて……利津』
あの唇から零れた言葉を不意に思い出してしまい、それがとてつもなく動揺してる。
キスしたことより、恥ずかしいかもしれない。
慌ててやつの唇から視線を外したけれど、絶対に不審に思っていると思う。
頭上で小さく笑う声が聞こえたかと思えば俺の髪に口付けを落とし、残りの書類に取り掛かっていた。
ついさっき、こいつは俺に何もしないと言わなかったか?
いや正確には、わかってる。と言っただけだけど、了承したことに間違い。
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