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「りっちゃーん!」
相変わらずの登校風景。
ものすごい勢いの突進に加えて、後ろから抱きつかれた。
さすがにもう慣れた、というか諦めに近かったりする。
「だから、重いって。」
「昨日はよく眠れた?」
眠りに就いたのはソファーのはずなのに目が覚めるとベッドで朝を迎えていた。
簡易キッチンの隅には飲みかけだった俺のカップと、あの馬鹿が使っていたカップがきれいになって並べられていたということは、あいつが俺を運んで、カップまで洗ってくれたんだよな?
「もしかしてさ、俺を運んでくれたのってあんた?」
「ほかに誰かいたかしら?」
そうだったよな。
おまえ以外いなかったよ。
「ありがと。」
「俺がしたくてしたことなんだから、いいのよ。」
だからって頭を撫でるなよな、ガキ扱いされるのが一番腹立たしい。
そういえば、昨日もこうやって撫でてくれたあと眠くなって、
「昨日俺が寝る前、何か言おうとしてたよな?」
「そうだったわね。」
そうだったわねって、自分のことじゃないのか?
「適当なこと言ってないでさ、」
その続きの言葉を言い掛けたが、驚きのあまりなにも言い出せないでいた。
俺の唇をあいつの指先が触れ、次の言葉を紡がせてくれなかった。
「本当に覚えてない?」
唇に触れた手を離すとそのまま頬に触れ、思い出させるようにと優しく問い掛ける。
そうだ、
確かこんな感じだった。
暖かい何かを頬に感じて、
それから、
どうなったのか思い出せない。
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