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「覚えてるわけないわよね。すごく眠そうだったから。」
しばらくの沈黙のあと、寂しそうに笑いながら頬を触れていた手を離した。
「大事な話じゃなかったのか?」
何も言わない。
ただ、切なげに笑いかけるだけ…。
そんな顔されると、周りから俺が悪いことしているみたいに見えそうな気がする。
「りっちゃん、また遅刻しちゃうよ?」
俺の手を掴むと生徒会室へと歩み始める。
はぐらかされることはよくあることだけど、やっぱり気に食わない。
掴まれていた手を思い切り引っ張ることで歩みを止めさせると驚いた表情をする馬鹿の間抜け面が拝めた。
「言いたくないなら言わなくていい。だけど、そんな顔するなよ。俺が虐めてるみたいだろ。」
きれいな銀髪の髪を梳くように撫でてやると、またまた驚いた表情。
到底俺がするはずのない行動がまさに起こされているからなのか、こいつはいまだに固まったまま。
いつも振り回されてばかりいる俺からのささやかな逆襲だったりした。
「とにかく、もう行こうね。」
梳いていた手を握られすぐに離されると、やつも顔を背け歩きだす。
不意に見えた表情はわずかに赤みがかっていた。確実にその原因は俺なんだけど。
馬鹿だよな。
逆襲は大成功…だったらしい。
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