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相手に気付かれないようにさり気なく、そっと視線の感じるほうを見たつもりだったが、
ばっちりと俺を見ていた。
俺が相手へと視線を向けたのがわかると、ふわりと柔らかく笑いかけ、再びじっと俺を見つめ続けている。
「それって地毛?」
「は?」
言っている意味がわからなくて首を傾けて考えていると、俺の髪を指差した相手はこれと笑顔を向けた。
「染めた。」
「自分で?」
「そうだけど、」
「きれいに染まってる。器用なんだね。」
そう言って栗色に染めた俺の髪にそっと触れる。
「その前に名乗るのが礼儀だろ」
「どうせ後でみんなの前で自己紹介するんだからいいでしょ。」
そうなんだけどさ。
よほど気に入ったのかはわからないが、彼の手は俺の髪を触ったまま離さない。
「灯嘉、渡瀬灯嘉だよ。」
渡瀬 灯嘉(ワタセ トウカ)と名乗った彼は小首を傾げ、茶色い目を細めながら俺に笑いかけた。
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