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窓の隙間から吹き込んでくる風が、渡瀬のフワフワのくせっ毛に赤みがかった茶髪を揺らす。
渡瀬は同じ男なのに、容姿も動作も、すべてが可愛いと思う。
「君の名前は?」
風で髪を踊らせたまま、俺へと向けられる視線は優しくて、たぶんみんなから大事に育てられたんだろうな。笑顔が純粋そのものだった。
「聞いてるの?せっかく僕、名乗ったのに。」
少し頬を膨らませながら俺の目をじっと見つめる。
「柊 利津」
名前だけ言うとさっと視線を逸らしてしまった。
渡瀬の声は耳に入ってたんだけど、さっきの渡瀬の姿が頭から離れなくて
つまり、渡瀬に魅入っていたということなんだけど。
「名字で呼ぶのめんどくさいし、名前で呼んでいいでしょ。利津?」
了承する間もなく、すでに呼んでいることはこの際気にしないでおこう。
すっごく間抜けな顔してたんだと思う。
渡瀬が口端を上げた。
「いつになったら俺の髪、離してくれるんだ。」
「ごめんね。」
何回か俺の髪を撫でたあと、渡瀬の手は離れていった
「僕のこと、灯嘉って呼んでね」
言っとくけど、利津だけだからね。呼び捨てで呼ばせるのは。
そっと、俺にしか聞こえない声色で囁く。
一瞬、何を言ったのかわからず動くことが出来なかった。
ようやく言葉の意味を理解して慌てて灯嘉を見たが、もう席に着いており視線は教壇へと向けられていた。
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