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約束のその日、俺はいつもより念入りに髪をセットしていた。
洗面所の鏡に廊下をうろつきながらチラチラこっちを伺う姉貴が映る。
顔は完璧にニヤけている。
正直、だんだんイライラしてきた。
「なんだよ、さっきから。ニヤニヤしながら人の後ろをウロウロしたりしてさ!!」
ついに俺はついにたまりかねて姉貴に言葉を投げ掛けた。
「いんや、べっつに~。
今日はばかにめかし込んでるなーと思ってね。
はっはーん、さては…。」
姉貴は、相変わらずニヤニヤしながらそこで言葉を区切ると、こう続け、更に笑みを強めた。
「デートかにゃ~?」
「!!」
顔が一気に火照り赤くなっていくのが自分でもわかる。
実は彼女と付き合っている事は、姉貴も知っている。
それも、前に姉貴の尋問を受けて、白状させられたからだ。
おかげで俺達は晴れて両家公認の仲になった。
だがしかし、未だに恥ずかしいものは恥ずかしい。
この感情はいつ消えるんだろう。
姉貴はそんな俺を見て、オモチャを見付けたネコみたいな顔で笑った。
「そ、そんなの、どうでも良いだろ!!
俺、もう行くから。」
そう言い捨てると俺は愛車であるコルトラリーアートVersionRのキーを掴むと逃げるように家を出た。
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