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彼が遊園地の混み合った駐車場の中から空いてるスペースを見つけ、コルトを滑り込ませる。
そして、ボク達は他の来場客の群れに混じるようにしながら、遊園地の入場ゲートへ辿り着いた。
この混み合った道のりも、彼と一緒なら全然苦にならない。
駐車場から想像はついていたが、入場券の売り場にはかなりの人数が繋がっている。しかし、彼がバイト先でもらった招待券のおかげで比較的すんなり入る事ができた。多分、この招待券を手にしただけでもかなりラッキーな事なのだろう。ボクは、この幸運を与えてくれた神様に心の中で感謝した。
この季節ならではの装飾や音楽で彩られた遊園地の中は正に外とは異空間だ。
更にキャラクターの衣装も、この時だけの特別仕様だ。
まるで夢の国のようだ。
「さあ、行こうよ。」
そう言って、ボクは手を差し出し、彼の手と繋いだ。
その後、ボクらは色々なアトラクションを楽しんだ。
手始めに近くにあったコーヒーカップに乗り、絶叫マシンをハシゴし、季節外れのホラーハウスでボクがあまりに凝った仕掛けに驚いて悲鳴を上げながら抱きつくと、彼はそんなボクをギュッと抱き止めてくれた。
だが、流石にメリーゴーランドに男が乗るのは抵抗があるらしく、ボク一人で乗ってきた。どうしても諦めきれないボクは、「えー、一緒に乗ろうよー。」と言いながらかなりしつこく食い下がってみたけど、やはり恥ずかしいみたいで結局「うん」とは言ってくれなかった。でも、ずっと柵の外でデジカメで写真を取りながら待っていてくれた。
ボクはそんな彼に向かって手を振り続けた。
そして、日が暮れかけてきた頃、ボクらは観覧車に乗って、沈みゆくオレンジ色の夕日を一緒に見ていた。
「ありがとう、コマ君。
こんなステキな所へ連れてきてくれて。」
ボクは夕日を見ながらそう彼に言った。
「いや、俺にはこんなことぐらいしかできないから。星佳こそ喜んでくれてありがとう。」
彼も照れながらそう言った後、こう続けた。
「実は、この遊園地は、日が暮れてからが本番なんだ。
最後まで楽しもう。」
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