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『…ちっ、油断したか…普段、こんなへま…しねーのに。』
男は腹を貫かれた自らの姿を目の当たりにし、そう吐き捨てた。
情け無いなんて暢気に笑っている場合ではない。
平然を予想ってはいるもののダメージは相当でかい。
“ぐぉぉぉ!”
蠍が咆哮する。
本来蠍は鳴くことはないがこの巨大蠍は″ナキサソリ″と呼ばれる種で、夜になれば一斉に雄叫びを上げる日も少なくはない。
『…面倒…だな…ごぼっ…』
腹から口から大量に血が溢れる。
抜こうとするが力が入らぬわ、血で滑るわで一向に抜ける気配はない。
流石に腹に風穴空けられりゃ死を覚悟するが、どうやら運悪く刺さりどころが悪かったようだ。
楽になることすら許されないようだ。
『…せめて、日の差す時間なら何とかなったものだが…』
意味ありげな言葉を発するが、日の入り時刻までまだ時間がある。
このままでは文字通り無駄死にしてしまう。
“ぐぉぉぉぉ!!!”
雄叫びを上げながら尻尾を振るう蠍…男の体は意図も簡単に宙に浮き上がる。
『あっ、がっ…ごぽっ…』
意思とは裏腹に段々と力が抜けて行く。
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