神の咎人と云うもの

3/6
前へ
/9ページ
次へ
『…ちっ、油断したか…普段、こんなへま…しねーのに。』 男は腹を貫かれた自らの姿を目の当たりにし、そう吐き捨てた。 情け無いなんて暢気に笑っている場合ではない。 平然を予想ってはいるもののダメージは相当でかい。 “ぐぉぉぉ!” 蠍が咆哮する。 本来蠍は鳴くことはないがこの巨大蠍は″ナキサソリ″と呼ばれる種で、夜になれば一斉に雄叫びを上げる日も少なくはない。 『…面倒…だな…ごぼっ…』 腹から口から大量に血が溢れる。 抜こうとするが力が入らぬわ、血で滑るわで一向に抜ける気配はない。 流石に腹に風穴空けられりゃ死を覚悟するが、どうやら運悪く刺さりどころが悪かったようだ。 楽になることすら許されないようだ。 『…せめて、日の差す時間なら何とかなったものだが…』 意味ありげな言葉を発するが、日の入り時刻までまだ時間がある。 このままでは文字通り無駄死にしてしまう。 “ぐぉぉぉぉ!!!” 雄叫びを上げながら尻尾を振るう蠍…男の体は意図も簡単に宙に浮き上がる。 『あっ、がっ…ごぽっ…』 意思とは裏腹に段々と力が抜けて行く。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加