無言

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次の日、それなりに大きな街を見つけ、バケモノは近くの森に降りた。 昼間なのにと不思議がる子どもの前で、ウサギや鹿の毛皮を集める。 「これを売って、香辛料を買うんだよ。あればっかりは人間のがうまい」 納得したのかわからないが、バケモノは毛皮を持って街に行こうとした。 「……何故、ついて来ない?」 バケモノが振り返ると、子どもは迷うようにうつ向いた。 「来ないならいいが、そこにいたら狼の餌食だ。……ああ、」 そこまで言ってから、子どもが何度も人に拒絶されていることを思い出した。 また、石を投げられ、拒絶されることが怖いのだろう。バケモノにはその感覚はわからなかったが、そう思うことは知っていた。 「俺と一緒にいれば、飼われている奴隷に見えるだろうよ。笑われるのが怖いなら、手足の鎖を千切るんだな」 バケモノが再び歩き出すと、後ろから子どもも着いてきた。 街に着くと、毛皮を売りに来たと門を通り、後ろからついてくる子どもも一緒に通った。 街は、広かった。 市場が広がり、果物や不思議なものがたくさん並んでいる。子どもは不思議そうにキョロキョロと回りを見ていた。 バケモノは見向きもせずにまっすぐ歩き、毛皮を買ってくれそうな店を探す。 やがて、毛皮が並ぶ店の前で交渉に入る。社交辞令を並べ、毛皮をすべて渡す。 「こんなもんかな」 受け取った小金を持ち、香辛料の店を探そうと振り返ると、 子どもがいない。 「……おい、俺の後ろに子どもがいなかったか」 「奴隷ですか? あっちに行きましたけど」 商人が指さした方向に、バケモノは走り出した。 .
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