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「魔物の力の影響? 俺は人間は食わないからな。よく知らん」
「例えばほら、不死鳥とか、身体が炎でできてると触るだけで大変じゃん。それを防ぐのにさあ?」
不死鳥なんて会ったこともない。バケモノが呟くと、ヒガロと名乗った男はケラケラと笑った。
「恩返しが必要でね、その影響を受けない方法が知りたいんだけど……」
「知らん」
困ったように笑うヒガロの代わりに、アクと名乗ったもう一人が言う。高い身長に低い声で、性別は女だと言う。
「噂程度でも良いのだが……ないなら致し方ない」
アクが息を吐き、子どもの前に膝をついた。
「お前の呪いは解けない。それは死ぬまでお前と共にある」
子どもは小さく頷いたが、バケモノは首を傾げた。そんなバケモノを見て、ヒガロはケラケラと笑う。
「俺の奥さん、あんなナリして巫女さんなんだぜ。いいだろ。これ自慢だよ」
ヒガロの言葉は無視して、子どもはバケモノの足を掴んだ。
「なんだ?」
「あなたと一緒に行きたいのだろう。彼はあなたがだいぶ好きなようだ」
バケモノが奇妙に顔を歪めたが、それは悪い気がしてのことではない。
むしろ、知らない感情が胸に溢れたからだ。
「じゃ、俺らはまだ旅かな。お兄さんたちも道には気をつけてね」
ヒガロとアクに別れを告げ、香辛料を買いに行った。
今度はしっかりと、手を繋いで。
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