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酷い熱だろうと言われた。こんなに寒いのに外にいたからとも。
バケモノにも温かいスープが出されたが、一切口をつけなかった。
まだ、子どもは目を覚まさない。
「アンタ、大丈夫かい?」
恰幅の良いおばさんに声をかけられ、バケモノは小さく頷いた。
「……ありがとうございました、こいつの世話までしてくれて」
「いや、いいんだ。あんなに慌ててたからね。アンタも心配だよ」
暖炉に煌々と光る火を見て、バケモノは唇を噛んだ。
「まあ、この村もそんなに景気は良くないね。特に、街の外にバケモノが住んでからは」
バケモノが顔を上げると、子どもの額の布を絞りながらおばさんは語った。
「ここの西に大きな街があるんだけど、その道にバケモノが住んでね、物資が届かないんだよ」
バケモノは、子どもを見た。閉じた瞳は、こんな時でさえ美しい空の色だろうか。
「……お願いが、あります」
バケモノは、不思議そうなおばさんを見た。決意したことは、
「そのバケモノを退けたら、この子どもを、この村で引き取っていただけますか」
バケモノがバケモノである理由を、示そう。
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