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だが、姿を変えたバケモノの前に、小さな子どもが立った。
美しく輝く青い瞳と、手足に残る赤黒い痕。細い足で、バケモノを止めるように立った。
「な……お前、大丈夫なのか?」
怒りの感情を忘れ、バケモノは子どもの心配をした。顔色も平常に戻り、いつもと変わらぬ子どもの姿だった。
「あいつ、バケモノをかばった……」
「あいつもバケモノだ」
「バケモノはでてけ!」
だが、村人は子どもにすら石を投げ、バケモノはとっさに子どもをかばった。
「貴様ら、死ぬ準備はできてろうな……」
バケモノが牙を光らせたが、その羽根を小さな手が止めた。
「止めるな! あいつらを許せるのか!」
バケモノが子どもに怒鳴ったが、子どもの小さな手は決して怒りの感情を持っていなかった。
バケモノは奥歯を噛んだ。こんな小さな子どもが、こんな扱いを許さなければならない理由は、バケモノにはきっと、一生わからない。
「っ……くそおおおおおおおおおおおおっ!!」
バケモノの泣き声に似た咆哮に村人が怯えている間に、子どもを背に乗せたバケモノは飛び立った。
冷たい空気を切り裂き、背中に残ったたった一つの熱が、この世界のすべてだった。
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