代言

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風の弱い地表ギリギリを飛び、子どもは村から奪ってきた毛布を頭から被っていた。 「ちょっとは暖かくなってきたな」 バケモノが言うと、子どもは背の上で身動ぎをした。 南に飛び続け、気候も暖かいものになってきていた。子どもが体調を崩すこともないだろうと安心はしたが、バケモノは気を抜くつもりはなかった。 「もう少し行ったら、西か東に行くか。どっちがいいか考えとけよ」 子どもがまた動き、バケモノは風が荒れないか慎重になりながら進んだ。 村から出てからも子どもは変わらず、殉じてバケモノも変わるわけにはいかなかった。 辛いのはきっと子どもだとバケモノは思い、言葉を持たない子どもをこれ以上悲しませたくないと、勝手に考えた。 そして、毛布もいらないほど暖かくなってきた頃、子どもは東を指さした。 「こっちか」 バケモノは羽を広げ、美しい珊瑚礁を見ながら羽ばたく。 彼の背中の上からでは、太陽の光を反射して輝く海も、白く続く海岸線も、何かとても尊いものに見えた。
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