代言

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しばらく飛び、夜には満天の空の下で眠った。 子どもはバケモノの身体に寄り添うように眠り、バケモノもその身体を守るように包んでいた。 「ここらは、昔から暖かい地域だからな。近くに星が落ちたこともあるらしい」 朝焼けの中で、子どもは不思議そうに顔を上げ、バケモノはその頭を乱暴に撫でた。 何度も星を越え、空を裂き、風を渡った。 季節が巡り、暖かさが芽吹きを呼ぶ頃。 「あ? なんだ?」 白い岩が眼下に広がる荒れた地方で、子どもはバケモノの背を叩いた。 子どもは細い川の向こうを指さし、そこにある小さな村を見ていた。 「あっち? 行きたいのか?」 子どもが何度も頷くので、バケモノは方向を変えた。 村の手前ほどで降り、姿を人に変える。そして子どもの手を掴み、村に向かった。 「……旅の人かい?」 村は寂れ、近くにいた老婆に枯れた声で問われた。もちろんと答えると、老婆は深いため息を吐いた。 「すぐに消えたほうがいい。ここは呪われた土地だ」 それだけ告げると、足を引きずって村の中に戻っていく。意味がわからずに子どもを見たが、彼は足元を見るばかりだ。
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